■VDSLの高速性
VDSL(Very high data rate DSL)はxDSLの中でも最大100Mbpsという高速な通信が可能で、速度と距離の組み合わせで様々な提案がなされています。
VDSLの伝送方式はほぼADSLと同じですが、使う周波数帯域が違います(下図)。周波数が高い帯域を使うことで高速な通信を可能にしますが、その反面ノイズの影響が大きく伝送距離が短くなるという欠点があります。そのため日本では主に集合住宅やホテルなどで使われています。
最近では150Mbpsも可能な技術開発も発表され、今後ますます期待の大きい通信方式と言えます。

■マンション内での構築に向いたVDSL
光ファイバは伝送距離が長く高速ですが、マンション内に設置するには、マンション内の配線工事が必要になります。逆にVDSLは高速で距離が短く収容局から家庭までの通信には向きませんが、既存の電話線を使うため大がかりな工事が必要ありません。そのため、HomePNAのようにマンションまでを光ファイバ、マンション内をVDSLという、お互いの欠点を補う形での利用が考えられます。
また、光ファイバ化が進み、地下を通った光ファイバが地上に出る「き線点」までが光ファイバ、そこから各世帯までがメタリックケーブルになっている場合も増えてきました。こんなFTTC(Fiber
To The Curb)の状態の場合、き線点から各世帯までをVDSLというケースも考えられます。

■干渉問題と解決方法 〜G.vdsl.f
Bandplan〜
VDSLもADSLと同様、周波数帯域の違いによって電話とインターネットの同時使用が可能です。ADSLと違うのは、VDSLはほとんどの業者でISDNと共存できるようにしているということで、ISDNと共存させたいというユーザーには特に利点があるサービスといえます。
しかし、VDSLの使う周波数帯域はかなり広いため、他の機器との干渉も考えられます。特にHomePNAは使う周波数帯域が重なるため両方のシステムの共存は難しく、現にNTTのマンションタイプなどでは「共存できない」としています。しかし、最近ではPowerBand/USENのように併用する業者も現れ、システムによっては干渉を抑えることも可能のようです。
VDSLとADSLに関しては同一回線上の共用は基本的にはできないようですが、マンション内での共存は「宅内の回線の状態や長さ等によって干渉する場合としない場合がある」(WAKWAKピアル)とのことで、導入時にはよく調査してもらい、干渉するようなら何らかの対策をたててもらうのが理想です。アマチュア無線やAMラジオとの干渉もありえます。
これらの干渉に関しては最少に抑えるため、周波数帯域を従来の2Bandに対しG.vdsl.f
Bandplanでは上り2/下り2に分割する4Bandが勧告されました(上図使用周波数帯域参照)。上り1/下り2の3Bandを採用したり1.1MHz以下の帯域をOFFにする製品もあります。今ではほとんどの事業者はそれぞれ干渉対策をしていて、ADSLなどとの干渉については心配ないレベルになってるようです。ただ、マンションの状況によっても変わってくる可能性がありますので、様子を見る必要はあるでしょう。回線の状況によっては干渉しないはずのISDNが干渉したなどという事例もいくつかあるようです。また、たまにノイズの発生する電話機があったりしますので、ノイズフィルターなどを使用して速度が向上する場合もあります。マンションや製品によって色々違ってきますので、これといった原因がないのに速度が出ない場合は様々な干渉の可能性を調べる必要があるかもしれません。ちなみに私のマンションで導入したシステム(USEN)では、ADSLが使用可能でHomePNAも併設されていましたが、VDSLと干渉の報告はないようです。
■24Mbps超や50MbpsのADSLとは干渉するか?
24Mbps超のADSLは、下りがダブルスペクトラム(従来のADSLの倍、上限2.2MHz)でかなりVDSLと重なる部分が増えます。さらに次世代ADSLではクアッドスペクトラム(上限3.75MHz)も検討されています。では、これらに相当の影響を受けるかというと、こういった規格に対応するために4Band
VDSLが規格されているといってもいいので、G.vdsl.f
Bandplanを適用したVDSLであればそれほど心配する必要はないと思われます。クアッドスペクトラムが上限3.75MHzに設定されているのはVDSLへの影響を考えてのことです(上図参照:下り最初の境界が3.75MHz。これ以上拡げるとADSL下りとVDSL上りが相互干渉する)。今後のADSLはVDSLの規格を考慮しながら速度アップしていくことでしょう。
しかしながら、現実にはまだ未知数な所があり、業者間でも意見が分かれるところです。このような干渉問題はシビアなところですが、VDSLはマンションという狭いエリア内で使用されるもので、万一干渉したとしても十分対処は可能でしょう。
■マンション設置の注意点
VDSLの使用距離はADSLほど長くありません。大規模なマンションでは、センター装置に近い部屋と遠い部屋では速度差が生まれる可能性もあります。心配であればその点も導入時のテストで確かめた方がいいでしょう。マンションのセキュリティシステムなどにも注意が必要です。
導入に関しては、マンション共用部にセンター装置などを設置することになりますので、大家や管理組合の許可が必要になります。また、設置するスペースがない、電源が確保できない、そもそも棟内MDF(主配線盤)がない集合住宅の場合は、導入できないということになります。
いずれにしても、まず業者に連絡して現地調査をしてもらうことになります。問題点があれば対策を考慮してもらいます。また、問題点によってはA社では設置は無理と言われたがB社で設置することができた、ということもありますので、価格や導入方法、速度の比較などと合わせ、いくつかの業者と交渉するのも必要かもしれません。
このようないくつかの注意点を確認しておけば、集合住宅での導入にはもっとも現実的なサービスとなります。既存の電話線を利用するため、MDFに機材を設置する程度で大きな工事は必要なく、導入時の費用や維持費も業者側が負担し、管理組合やオーナーの負担がないサービスが多いようです。
新築時に初めから各世帯に光ファイバインターネットを導入している場合はともかく、既存の集合住宅でコストパフォーマンスを考えた場合、集合住宅専門のサービスといえば当面の主流はこのような電話線を使ったサービスとなりそうです。
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